【Al Jazeera 報道】貧富関係なくスリランカ人が免れない深刻な経済危機 〜 2022年4月8日

・スリランカの人々は、富裕層も貧困層も同様にうんざりしている。
・深刻な経済危機に見舞われ、首都コロンボの低所得層居住区の住人は、1年足らずで食料価格が2倍になり食事が以前の半分になったと言う。
 一方、中流階級の居住区では、カフェやベーカリー、サロンのオーナーがスタッフを解雇せざるを得ず、数時間に及ぶ停電や収入減で客足が遠のき閉店する事態に直面している。
・コロンボ南部ヌゲゴダ地区の女性は、
「国全体が破壊されている。野良犬でさえ私たちより良い暮らしをしている。何もかもが高くどうにもならない」と述べる。

・外貨危機に端を発し、人口2,200万人の島国スリランカはここ数十年で最悪の経済不況に見舞われている。
・ゴタバヤ・ラージャパクサ大統領の政府は、外貨不足により燃料や他必需品の輸入への支払いができない状態に陥っている。その結果、燃料不足が原因で最大13時間の計画停電が発生し、一部では交通が停止している。
 軽油や灯油、調理用ガスを求める行列はよく見られる光景で、配分を受けるために何日も並ばなければならない人もいる。警察によると、猛暑のなかで待っている間に少なくとも2人が死亡した。
 医薬品価格も高騰。今年、ルピーは対米ドルで30%急落、世界最悪の通貨となった。
・ラージャパクサ政権は国際通貨基金(IMF) に救済を求め、インドにも財政支援を求めている。インドは2月に、燃料輸入向けに融資枠5億米ドルを提供、3月には必需品不足の緩和に第二の融資枠10億米ドルを承認している。

・コロナ危機により主要経済部門の一つの観光業が壊滅状態になってから2年、大統領の辞任を求める抗議デモが3月初旬から国中で起きている。抗議デモ参加者は、”Go home, Gota” と大統領の愛称を呼びながら、時間を変えて一日中各都市の街頭に出ている。
・コロンボは、爆撃、暴動、外出禁止、配給制に耐えてきた街だ。その大半は2009年に終結したタミル人分離主義者との26年間の内戦の間で、多くの住民が最も辛い時期だったと語っている。

・線路際に低層の家屋が立ち並ぶヌゲゴダでは、住民はかろうじて食べられるだけのものがあると言った。家政婦として働くマドゥマゲさんは、糖尿病と高コレステロールの治療薬を買うお金がもうすぐ底をつくと心配し、「これは災難だ。どうやって生きていけばいいのか」と言った。
 別の男性たちは、
「自分も生活するのがやっとだ。3万ルピー(約13,500円)のほとんどが食費に消える。もう、こんな生活にはうんざりだ」
「これまでで一番大変だ。トゥクトゥクの運転手が仕事だが、ガソリン価格が倍増して乗車賃が上昇、仕事が減った。肉やパン、粉ミルク、卵を買うことができなくなった。以前は週に2〜3回は鶏肉を食べていたが、今は干し魚とコメだけ」と言った。

中央銀行の統計によると、3月のインフレ率は前年同月比で18.7%上昇した。食料品価格は30.2%も跳ね上がり、タマネギ、ダール、コメは以前の2倍の値段になった。トマトは3倍、輸入品のターメリックは4倍になっている。
・コロンボ南東部ナラヘンピタの青果市場の販売者は、ニンジン、豆、ネギ、唐辛子を豊富に揃えた屋台で、
「供給は十分だが、人々はもう食料品を買うお金を持っていない。もう誰も食料を買いに来ない」と語った。
 半分しか入っていないビニール袋を手にした客を指さしながら、
「彼は13年前から通っていて、以前は袋いっぱいに野菜を買っていた。今は減らさざるを得ない。
 昔は欲しいものを買っていたのに、今は生きるのに必要なものしか買わなくなった」と話した。
・隣の果物屋台では、
「農産物の高騰で食品店を閉めなければならないかもしれない。以前は1日50人以上の客が来たが、今は10人程度。ひどい時代だ。スリランカでは生きていけない」と言った。

・多くが、この危機は中産階級に最も大きな打撃を与えていると語った。
・美容院の経営者の女性は、日中に4時間以上続く停電で閉店せざるをえないかもしれず、既に3人の従業員を解雇したと語った。
「中産階級そのものが消滅しつつある。この政府は去るべきだ」と述べた。
・小さな建設会社の打撃も大きい。
「自宅を工事していた人の多くが、完成する見込みがなくなってしまった。セメントや鉄筋の価格が3倍になり、住宅建設に借りた銀行ローンが足りない」
・有力企業は資材を購入する外貨を持っているため、大規模建設プロジェクトは続いている。
 しかし大企業でさえも、新規プロジェクトには着手しておらず、危機の影響がいかに広範囲に及んでいるかを物語っているという。

ある市民は、これまでのスリランカでは、富裕層の人々は国を揺るがす危機から離れたところにいたと語った。しかし今、富裕層は貯蓄の価値が日に日に下がっていく状況を「新たな恐怖」として見つめている。
 3月には多くの人が金を買ってルピーを処分しようと殺到し、金価格が過去最高値に上昇した。

危機が悪化するにつれ、スリランカを離れることができる人は誰でもそうするつもりでいる。
・30歳のある女性弁護士もその一人だ。しかし、通貨下落がその計画を複雑にしている。
 彼女は2か月前、海外留学のために220万ルピー(約99万円)の銀行ローンを申し込んだ。当時は1米ドル=200ルピーだったが、3月上旬には230円、4月第1週には300米ルピーに下がっている。
 彼女は申請したローンがもはや十分ではなく、銀行が学費の支払いに必要な外貨を発行してくれるかも不明だという。
 商業銀行のある職員は取材に、出国を前にした学生には外貨を発行しておらず、すでに国外にいる学生は支払いの承認までに「非常に大きな遅れ」に直面していると語った。
・しかし彼女は出国の決意を固めた。
「ルピーの価値は下がる一方だと思う。私が計画を立てたとき、この国は既にひどい状態だった。そして状況は悪くなる一方だった。どうにかして出て行くつもりだ」

コメント

タイトルとURLをコピーしました