【BBC 報道】スリランカ、経済危機に苦闘する企業 〜 2022年4月8日

・アパレル製造企業社長、コララージュに、工場の機械やスチームローラーを動かすための十分な軽油燃料を見つけるのが毎日の苦労の種である。社長は発電機に使う燃料 400L を探して回っている。
 スリランカの至る所の工場は、長時間の停電が日常茶飯事になった。発電機がある工場もあるが、その燃料に限りがあり一時的なもの。
・この社長はBBCの取材に「今日はどうにか生き延びたが、明日はわからない」と話す。
 同社は、Victoria SecretPUMALEVI’S 向けにニット製品を製造輸出しており、他社同様に生産目標達成に苦労している。

・アパレル衣料品は、スリランカ経済で2番目に大きな外貨獲得源。同業界はコロナ危機から回復したばかりで、2022年1月の輸出収益は前年比22.1%増の5.14億米ドル。
受注は今後3〜6か月の間、満杯状態。しかし、インドネシアやバングラデシュ、ベトナムのライバルにビジネスを奪われる不安に、現在の混乱が加わった。
「政府が燃料を供給してくれないと生産を停止せざるを得なくなり、顧客への納品に影響が出る。顧客は毎日、注文に間に合うか尋ねてきている」。

・スリランカはここ数十年で最悪の金融危機に直面し、中央銀行のデータによると、3月の外貨準備高は16%以上減少して19.3億米ドルとなった。
この会社はスリランカが望んでいた経済発展モデルの典型例。島国の内陸部に工場を持ち、地元の雇用を創出する。同社は800人を雇用し、社長を含め全員がスリランカ人。輸出向けアパレル衣料品を製造し、地元の村に年間14万米ドル近くをもたらしている。

・しかし今は悪循環に陥っている。米ドル不足により、食料、医薬品、燃料など輸入品への支払いに苦労している。
 発電所も稼働維持に苦労している。長期にわたる計画停電は、企業、特に米ドルを稼ぐ輸出企業を苦しめている。
・この会社のような輸出企業は通常、決まった価格で受注するため、コスト上昇分の吸収が限られる。ルピー安は輸出業者には有利だが、コスト増がすべてのプラス要因を台無しにしている。
・ビジネスと雇用の両方に影響を与える。社長は、生活費が上昇すればするほどスキル労働者の確保が課題になると語る。

・稼働するのはミシンだけではない。公共交通機関の50%近くが運休し、労働者の工場への通勤がさらに難しくなっている。
・この会社から25km離れた南部エンビリピティヤの町のバスターミナルでは、いつもより混雑していなかったものの行列ができていた。
 事務員として働くディリーカは1時間以上待っていた。
「以前は15分でバスに乗れたのに、今は1〜2時間待たないといけない。燃料が切れてバスが途中で止まることもある」と語る。
 彼女はオートバイを持っているが、ガソリンスタンドに燃料がないため遊休状態だという。

・次の客を待つ運転手は、長距離路線の運行が 1/3 に減ったと言う。バス運行会社は、燃料の配分のために混雑していない路線のバス運行を中止している。
「コロナ危機のロックダウンのときでさえ、これほど悪くなかった。コロナ危機は世界中が直面した危機だったが、今回は我々だけが苦しんでいる。何日も燃料の列に並ぶなんて、こんな生活は想像もしていなかった」と運転手はBBCに語った。
・先週、政府が港で燃料を降ろせないために、燃料供給を2日間停止すると発表したとき、輸送サービスは完全にストップしていた。
 全国に輸送する必需品を積んで港を出たコンテナトラックも、何kmにもわたる行列で何日も待たされ、不足を深刻化させている。

・コロンボ南130kmにあるビーチタウン、ヒッカドゥワは閑散としている。かつてはヨーロッパや中東からの観光客でにぎわったが、今は人通りもない。
・グナラトネ氏は昨年後半、3年ぶりに30室のホテルを営業した。半年間の好業績の後、再び静かなロビーと空室に直面した。
 ホテルは宿泊客が期待する最低限基本的なサービスさえ提供するのに苦労しており、観光客は離れていっている。
停電と必需品の不足は、スリランカ経済に重要な観光部門にも回復の希望を奪っている。過去に大規模な停電に直面したことがなく、ほとんどの中小企業はバックアップ用の発電機を持っていない。

・観光業はコロナ危機で崩壊し、スリランカの外貨準備高枯渇の主要因となった。政府は外貨流出を食い止めようと特定品目に輸入制限を設けた。
 その結果、粉ミルクやコメなどの必需食料品が不足し、突然の値上りに見舞われた。総合インフレ率はここ数週間で17%以上に上昇し、食料品インフレ率は20%を超えている。
 調理用ガスの補充さえできず、レストランは閉まり、ホテルは宿泊客の確保が困難だという。グナラトネ氏は、3〜4月の予約の8割がキャンセルされたと言う。
「外出禁止令は続くのか、食事は出るのか、宿泊客から問合せがあるが、何も答えられない。我々自身が基本必需品を買うのに苦労しているのに、どうやってお客様に約束すればいいのか」。

・スリランカは手つかずのビーチと豊かな地域文化で人気の観光地となった。
 しかし現在、街頭での抗議デモ活動は、休暇を過ごす安全な場所とのイメージに影を落としている。
・アメリカ国務省は脅威レベルを引き上げ、自国民にスリランカへの渡航を控えるよう求めるレベル3の渡航勧告を出した。インド最大の航空会社 Air India は需要減少を理由にスリランカへの便数を減らしている。

・スリランカが今必要としているのは、工場を円滑に稼働させて観光客を呼び戻す経済的政治的安定である。

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